第3章 コンプライアンスのポイント

コンプライアンスについて

第3章の「コンプライアンス」は、本試験で30問・60点と、配点の6割を占める分野です。合格基準の70点に届くかどうかは、ほぼこの章の出来で決まります。

ここでは、第3章 コンプライアンスで繰り返し問われている論点を、「問われること」「覚えること」「取り違えやすい点」の順にまとめています。

赤字の部分を中心に覚えておきましょう。コンプライアンスは出題が多いので項目も多いですが、どれも重要です。

1. 募集人の役割と業務

【問われること】募集人の業務の範囲と、それが何に定められているか。

【覚えること】募集人は、業者のために保険契約の締結の代理または媒介を行い、お客様に最適な保険を提案します。業者の委託を受けた募集人の業務は、業者と結ぶ委託契約書に書かれています。勧誘、商品の説明、申込みの受付、保険料の受領と領収証の発行、契約の変更・解約の受付、契約の維持・管理、事故報告の受付と業者への報告などが含まれます。

【取り違えやすい点】業務を定めるのは普通保険約款ではなく委託契約書です。「変更・解約の受付はできない」「保険金の請求について助言してはいけない」は誤りです。

2. コンプライアンスと保険業法の目的

【問われること】守るべき法令等の範囲と、保険業法の目的。

【覚えること】コンプライアンスの対象は、基本となる保険業法のほか、民法・保険法・消費者契約法・金融サービス提供法・犯罪収益移転防止法・個人情報保護法、そして委託契約書や業者の規定です。保険業法は、業務の健全かつ適切な運営と保険募集の公正を確保して保険契約者等の保護を図り、国民生活の安定と国民経済の健全な発展に資することを目的としています。

【取り違えやすい点】目的を「保険会社の安定」とする文、「委託契約書はコンプライアンスの対象外」とする文は誤りです。

3. 反社会的勢力への対応

【問われること】契約の関係者が反社会的勢力にあたるとわかったときの扱い。

【覚えること】反社会的勢力とは関わらない、利益を供与しない、事前に審査する(暴力団排除条項)が原則です。契約者・被保険者・受取人が保険期間中に反社会的勢力に該当したときは、契約を解除でき、該当した時以降の事故には保険金を支払いません。募集人が該当したときは、業者は委託契約を解除します。

【取り違えやすい点】解除の対象になるのは、契約の時点だけでなく保険期間中に該当した場合も同じです。保険金を支払わないのは、該当した時以降の事故です。

4. 登録・届出の区分と特定少額短期保険募集人

【問われること】募集人の種類ごとに、登録・届出・不要のどれか。

【覚えること】生命保険の募集を行う場合は、①業者の役員・使用人、②業者の委託を受けた者(代理店)、③代理店の役員・使用人のすべてが登録です。生命保険の募集を行わない(損害保険・傷害疾病保険だけの)場合は、①は不要、②は登録、③は届出です。このうち②以外(①と③)を特定少額短期保険募集人といいます。登録は内閣総理大臣に行い、登録事項の変更や業務の廃止は遅滞なく届け出ます。保険業法などで罰金刑の執行を終えてから3年を経過しない者などは登録を受けられません。

【取り違えやすい点】代理店(②)は損害保険だけでも登録が必要で、届出ではありません。登録拒否要件の「5年」は誤りです。

5. 代理と媒介

【問われること】代理と媒介で持っている権限の違い。

【覚えること】代理は、契約の締結権・告知の受領権・保険料の受領権を持ちます。媒介はいずれも持ちませんが、第1回保険料充当金は受け取れます。損害保険の募集人は通常「代理」、生命保険の募集人は通常「媒介」です。

【取り違えやすい点】「媒介は保険料充当金も含めていっさい受け取れない」は誤りです。生命保険の募集人には通常、契約の締結権はありません。

6. 募集行為・募集関連行為・どちらでもない行為

【問われること】具体的な行為が保険募集にあたるか。

【覚えること】保険募集は、新規・継続を問わず保険契約の締結の代理または媒介です。勧誘、勧誘目的の商品内容の説明、申込みの受領などがあたり、対面でも非対面でも同じです。申込書の記載内容の説明も募集行為です。見込客の情報を業者に提供するだけ、比較サイトに情報を載せるだけなどは募集関連行為です。指示を受けたチラシの単なる配布、コールセンターの事務的な連絡、説明会での一般的な保険のしくみの説明は、どちらにもあたりません。

【取り違えやすい点】チラシの配布を「募集行為」とする文は誤りです。募集関連行為でも、報酬を得て行うと募集にあたる場合があります。

7. 権限等の説明

【問われること】募集人が自分の権限について説明する事項。

【覚えること】①所属する業者の商号、②代理か媒介かの別、③自らの商号、④再委託者の商号、⑤取り扱える業者の範囲、⑥告知受領権の有無の6項目を説明します。説明しなかった場合は、登録の取消しまたは6か月以内の業務停止の対象になります。

【取り違えやすい点】告知受領権の有無は説明が必要な事項です。

8. 情報提供義務

【問われること】説明して書面で渡す情報の区分と中身。

【覚えること】情報は、①契約概要、②注意喚起情報、③その他の参考情報に分かれます。①②は重要事項説明書などで説明し、書面の交付(または電磁的な提供)が必要で、③は口頭でもかまいません。注意喚起情報には、クーリング・オフ、告知義務、免責事由、保護機構の資金援助がないことなどが入ります。非対面でも同じ程度の情報提供が必要です。自動更新の保険は、更新時に保険料や保険金額を見直すことがあること、更新を引き受けない場合があることを書面で説明し、受け取った記録を取ります。

【取り違えやすい点】「書面を渡せば口頭の説明はいらない」「自動更新の説明は口頭でよい」は誤りです。

9. 意向把握と意向確認

【問われること】意向把握の手順と、意向確認書面の扱い。

【覚えること】意向を把握し、それに沿ったプランを提案し、意向とプランの対応を説明し、最後に最終的な意向と比べて違いを確認します。把握するのは、どの分野の保障・補償か、主な内容、保険料・保険金額の範囲の希望です。性別・年齢などから意向を推定して提案することもでき、ペットの購入や不動産の賃貸借に伴う保険でも行います。更新や一部変更で実質的な変更がある場合は、変更部分について行います。意向確認書面には、顧客の意向、契約内容が意向にどう対応しているか、特記事項、募集人の氏名・名称を書き、確認は契約の締結まで、交付は確認後遅滞なく行います。その場での交付が難しいときは、口頭で確認して後から交付できます。

【取り違えやすい点】意向把握に使った帳票や意向確認書面は保存が必要です。公的保険制度の説明は第二分野に限りません。

10. 募集時の禁止行為と罰則

【問われること】禁止される行為の具体例と、どの罰則の対象か。

【覚えること】次の2つは、1年以下の拘禁刑(2025年5月までは懲役)もしくは100万円以下の罰金(併科あり)と、登録の取消しまたは6か月以内の業務停止の対象です。
・虚偽の説明、重要事項を告げないこと(例: 支払われない場合を説明しない、いつ解約しても払った保険料が戻ると説明する)
・虚偽の告知を勧める、告知を妨げる、告げないよう勧めること(例: 病歴や他の契約を書かないよう勧める)
次は、登録の取消しまたは6か月以内の業務停止の対象です。不利益を説明しない乗換募集、特別利益の提供(保険料の割引・割戻し。現金のほか、電子マネーに交換できるポイントや商品券も含む。例: 端数の値引き、契約者の親族への商品券)、誤解を招く比較(有利な部分だけ、「業界No.1」など客観的事実に基づかない表示)、配当を確実とする説明、威迫(断った客への深夜の電話・訪問、取引上の立場を使った加入の強要)、業者の信用・支払能力について誤解させる表示。

【取り違えやすい点】不利益を十分に説明して納得と同意の記録を得た乗換えは禁止されません。特別利益は契約者・被保険者以外(親族など)への提供も禁止です。

11. 罰則・処分の種類と検査

【問われること】違反の種類と処分の組み合わせ。

【覚えること】無登録での募集は1年以下の拘禁刑(2025年5月までは懲役)もしくは100万円以下の罰金(併科あり)、無届での募集や登録事項の変更の無届は50万円以下の過料です。検査での虚偽の報告は30万円以下の罰金です。罰金は刑罰ですが、過料は刑罰ではありません。内閣総理大臣は募集人に報告や資料の提出を命じ、事務所に立入検査ができ、委託先にも立入検査ができます。

【取り違えやすい点】「保険業法の違反は行政処分だけで、刑罰はない」は誤りです。

12. 高齢者・障がい者への対応

【問われること】高齢者への募集の方法と、障がい者への配慮。

【覚えること】高齢者には、親族などの同席、複数の募集人による募集、複数回の機会を設けること、募集人以外の者による事後の電話確認などで、十分な時間をとります。障害者差別解消法により、不当な差別的取扱いの禁止に加えて、合理的配慮の提供も法的義務です(2024年4月1日から)。障がい者は障害者手帳を持つ人に限りません。聴覚障がいのある人などには電話リレーサービスがあり、通常の電話と同じように対応します。

【取り違えやすい点】視覚障がいのある人への代読などの配慮は必要です。

13. 募集人の体制整備

【問われること】募集人にも体制整備の義務があるか。

【覚えること】募集人にも、業務の規模・特性に応じた体制整備の義務があります(重要事項の説明、顧客情報の管理、委託先の管理、比較推奨販売、保険募集人指導事業)。代理店独自の基準で商品を推奨する場合は、その基準と理由を説明します。規模が大きい募集人(所属する業者が15以上、または所属業者が2以上で手数料等の合計が10億円以上)は、事務所ごとに帳簿書類を作り、契約の締結日から5年間保存します。

【取り違えやすい点】「体制整備の義務は業者だけ」は誤りです。

14. クーリング・オフ

【問われること】対象となる契約、期限の数え方、申出の受け先。

【覚えること】対象は、個人の契約(営業・事業のためのものを除く)で保険期間が1年を超える契約です。申込者は、業者に対して書面(郵送)または電磁的記録で通知します。期限は、撤回等の説明を書いた書面を受け取った日と申込日の遅いほうから8日以内です。申込者が自ら指定した場所(喫茶店など。営業所・自宅を除く)での申込みや、郵便・FAX による申込みなども対象外です。業者は受け取った金銭を速やかに返します。

【取り違えやすい点】保険期間1年以内の契約は原則として対象外です。委託を受けた代理店は申出を受け付けられないので、業者へ直接通知するよう伝えます。

15. 消費者契約法

【問われること】取消しと無効の区別、取消しの理由。

【覚えること】保険契約も消費者契約で、業者だけでなく委託を受けた募集人も「事業者」です。誤認(事実と違うことを告げる、断定的判断の提供、不利益な事実を告げない)、困惑(帰らない、帰さない、退去しにくい場所に連れて行って勧誘する、不安をあおる、など)、過量契約による契約は取り消せます。事業者の損害賠償責任を免除する条項など、消費者の利益を不当に害する条項は無効です(2023年6月1日施行の改正後の内容)。

【取り違えやすい点】困惑による契約は「無効」ではなく「取消し」、不当な条項は「取消し」ではなく「無効」です。取消しは意思表示で初めにさかのぼって消え、無効は初めから効力がありません。

16. 金融サービス提供法

【問われること】重要事項の中身と、損害賠償の請求。

【覚えること】2021年11月の改正で金融商品販売法から名前が変わりました。少額短期保険の重要事項は信用リスク(業者の経営破綻のリスク)で、保険金などが削られる可能性や、保護機構の資金援助がないことを説明します。顧客は、説明義務を怠ったこと、または断定的判断の提供を立証すれば、元本欠損額を損害として請求できます。募集人も金融商品販売業者等にあたり、勧誘方針を定めて公表し、変えたときも公表します。

【取り違えやすい点】顧客が立証するのは「説明義務を怠ったこと」または「断定的判断の提供」だけです。

17. 犯罪収益移転防止法

【問われること】取引時確認が必要な場面、確認する事項、記録の保存期間。

【覚えること】取引時確認が必要なのは、①特定取引(生命保険契約の締結など。契約者の変更や解約も含む)と、②厳格な顧客管理が必要な取引(なりすましの疑いがある、以前の確認事項を偽っていた疑いがある、など)です。確認するのは本人特定事項(個人は氏名・住所・生年月日)、取引の目的、職業などで、本人特定事項は公的証明書で確認します。②で200万円を超える財産の移転を伴うときは、資産と収入の状況も確認します。確認記録は取引や契約の終了日から、取引記録は取引日から、いずれも7年間保存します。

【取り違えやすい点】200万円は「現金取引で本人確認が必要になる金額」ではなく、②で資産・収入の確認が加わる条件です。一度確認した顧客は確認済みと確かめれば再確認は不要ですが、偽りの疑いがあれば再確認します。本人特定事項に本籍地は入りません。

18. 個人情報保護法

【問われること】個人情報の範囲と、取扱事業者の義務。

【覚えること】個人情報は生存する個人の情報で、照合によって特定の個人を識別できるものも含みます(勤務先の職位なども含む)。募集人も個人情報取扱事業者です。利用目的を特定し、取得時に通知・公表し(アンケートで見込客の情報を集める場合も同じ)、要配慮個人情報は本人の同意なしに取得できません。個人データの第三者提供は原則として本人の同意が必要です。漏えいしたときは、委託先は直ちに業者へ報告し、財務局への届出や顧客への通知を行います。マイナンバーは支払調書の作成以外の目的で集めたり使ったりできません。

【取り違えやすい点】「死者の情報はいっさい対象外」は誤りで、遺族の情報にあたる場合があります。パスワードを付けても、持ち出す情報は必要最小限にします。

19. 日常業務(契約の締結・保険料・契約の管理・事故・苦情)

【問われること】日常の事務で正しい対応。

【覚えること】損害保険では被保険利益(保険の対象の所有者や実在など)を確かめ、他の保険契約の有無を確認します。申込書には契約者の署名または記名押印を受け、申込書の写しなどを渡します。保険料は全額を受け取り、業者所定の領収証を使い(名刺や市販品は不可)、書き損じは破棄せず業者に返します。受け取った保険料は自分の財産と分けて管理します。契約者の意思を確かめずに更新の手続きをしてはいけません。事故の報告を受けたら直ちに業者へ報告しますが、支払いの有無や金額を断定してはいけません。苦情などの紛争は、金融ADR(指定紛争解決機関は日本少額短期保険協会)で裁判以外の方法により解決を図れます。

【取り違えやすい点】小切手での領収は定められた方法なら可能です。生命保険の死亡などは、契約者・受取人が業者へ直接報告します。